2011/12/11

日本ツアー

約2週間の日本横断を終えての感想。
既存の枠にとらわれている日本の現状と、答えを求める質問の多さが印象に残った。前者は自らがおかれている状況の肯定と、現状の困難からくるあきらめのようなものを感じ、後者は創造性というブラックボックスを公式化しようとする欲求を感じた。今年に限らず例年感じられたことだが、全国5カ所どの会場でも共通してみられたことや、4年という歳月を欧州で過ごしたことからより一層客観的に状況を見れるようになったこともあるのかもしれない。

今回まわった南よりも震災のあった北の方が前に進もうという力を感じる。とはいえ困難な建設業界の中にあっても変化を求めてトライアルをしようとする人たちはいて、そんな方々からは来年に向けてのオファーをいくつかもらったし、プロジェクトも新たに動き始めることとなる。

僕たちは作品をつくるために仕事をしているのではないし、業界や一部の地域の中で賞賛を得るために仕事をしているのではない。潜在的な世の中のニーズを、ほんのすこし先を見据えながら提示していく行為こそがデザインだと思うし、だからこそ僕たちの職能は社会から求められるようになる。構築物を構想し問題を解決するという専門性はありつつも、国や分野や領域は与条件の違いに過ぎなくなる。内に閉じた狭い視野の思考では、いずれこの国は世界から取り残されてアジアの小さな保養地になっていくのではないか。

点在していた過去の経験や思考が線につながって見えてきている。どのひとつでもかけていたら今の状況は生まれていない。後から記述することはできても同じようにやったら再現できるような単純なものではない点はデザインという行為と似ているのかもしれない。大切なのは個々の事実の記述や解析よりも本質を体感的に掴むことなのだと思う。