2011/04/20

いろいろ

事務所では、海外進出に向けて、外向けにもいろいろ仕掛けることを始めている。PR専門の人間を雇ったし、いろいろな賞にもエントリーされるようになった。これまであまりにやってこなかったこともあるのだが。ミースファンデルローエ賞は受賞はしなかったがノミネート。Foot Bridge awordは3つの作品が美的部門、技術部門共にショートリストされている。

そろそろローランの個人で見れる限界の領域に来ているからだろう、先月から事務所の組織構成も新しくなった。チーム編成、組織構成を見ると毎回ながら僕のポジションは特殊なことがわかる。あらゆる段階の意匠的部分、およびプレゼンテーションをみることになるため、とりあえずここにというかたちになっている。事務所内に意匠部門はないため、構造エンジニアチームに入っているが、僕は構造計算は行わない。デスクの周りも皆エンジニアだが、デザイン能力やプログラミングを扱える人間が中心に集まっている。

僕はここに来てちょうど3年になるが、この環境のせいもあってだいぶ構造的な感覚もだいぶ身に付いてきた。ただ時としてこれが邪魔になることもある。やはり直感的なアイデアや思いつきがブレイクスルーになることもある。時には構造的に整理していくのはそのあとでもいい。どうしても力学は力強くかたちを示すからだ。来月日本にいくが、このアイデアはまさに僕が思いつきで作った模型からアイデアが動き出した。非常に難しいプロジェクトでローラン自身も悩んでいた。一つの模型をきっかけに、面白い構造的なアイデアになりつつあると思う。この試行錯誤の瞬間が毎回スリリングで楽しいのだが、今回は特にプロセスが楽しい。珍しく意匠からのスタートだが、構造的に面白いアイデアに落ちていきつつある。こういう何かしらのジャンプする要素は必要なのだろう。奇抜ではないが、シンプルかつ複雑さを兼ね備えたいいバランスのあまり他に見ない構造だと思う。

海外進出といえば、日本、南アフリカ、インドなど欧米以外の国で仕事が始まっている。日本に向けて、次に仕掛けることを考えていかないといけない。デザイン以外に僕はこういった仕掛けをする瞬間も楽しい。新しいプロジェクトが生み出される瞬間の楽しさは、経験するとやめられない。そこには様々な道のりがあり、時に交渉があり、先が見えなくなることもあるが、だからこそかすかに先が見えたときの嬉しさが大きいのだ。

5月連休は日本です。

2011/04/10

今思うこと

しばらくぶりの更新。震災後なんとなくブログを更新する気にならなかったんです。それはしっかり僕の中でわかったことがないうちは、このことについては書きたくなかったこともあるのかもしれません。遠くからニュースでながめていろいろ考え、今、ひとつ現時点で思うことがあるのです。それは、いろいろな物事や情報を、自分なりにしっかりと判断することが必要なんじゃないかということ。ちいさい存在なりに等身大の自分で判断すること。

情報や科学的データには、客観性があるようでいて、実はその解釈の仕方やデータの採取方法によって、導きだされるものは変わってくると思います。客観性ということを気にするあまり、発する自分の意見や考えが薄められていく気がします。これは遠くからニュースをみていて感じたことです。これからの僕たちは、自分で判断するほんの少し強い意志が必要だと思うんです。自分がこう考えて、こうしていくべきだというビジョンを描くことでもいいし、なにが好きで、なにを大切にしていて、どんな時間を過ごしてというひとりひとりが描くちいさな意志でもいいんです。ちいさな存在として感じたことを、はっきりと発することで、今までとは違った場所、時間を生きる意味が出てくるのではないかと思います。

また、何かを自粛したり、自分に今何ができるかを考えることは大事だけど、それによって見失ってはいけないものがあるようにも感じます。僕は自分の職業的に言えば、今すぐこの災害のために何かはできないと思っています。僕の職業が役に立つのはまだしばらく先です。いずれきっと、失った街やインフラを安全性を確保しながら、街の記憶をつなげるように、これまでとは少し違った質を紡ぎだせるようにしていくことは、必要になると思っています。この災害のためになにかできる機会が来るときまで、すこし不謹慎かもしれませんが、元気な僕は今自分のするべきことをし、これまで通り楽しむことは楽しんで過ごしたいと思います。

節電は別にして自粛したり、なにかができるかを考えて悩み落ち込むよりも、普通の日常に戻って、役立てることがあればするという方が、精神衛生上健全じゃないかと思うんです。被災した人たちの精神状態は僕には計り知れないけれど、ただ尋常じゃない精神状態の人が、周りの人まで落ち込んだ状態だったらどうかと思うと、やっぱり普通の健全な状態の人から応援してもらいたいんじゃないかと。前向きな思考が、いかに困難を突破していくかを僕はほんのすこしだけ知っているからかもしれません。

そんなわけで、僕は以前ここにも書いた日本のプロジェクトを進めています。それはきっと震災とは現時点では全く関係のないものです。いずれ救済とは違った意味での接点が生まれるのかもしれませんが、今はこれまで通り進めていきます。そんなに先を見つめなくても、強い意志があれば先は自ずとみえるものです。

また近くに小さな歩道橋とは別の新しい用件で日本にいくことになるかも知れません。僕はこれまで通り、僕なりの意志のもと、ひとつひとつ丁寧に扉をたたいていきます。元気にやっています!!