2010/07/06

コンペ、シンプルということ、統合

アムステルダムの歩道橋コンペ。今日結果が出て勝利。今回はプレゼン資料をつくっている時から勝てそうな予感はあった。ちょうど人工島アイブルグに建設されるクラウスエンカーンの建築の隣にできる。建築的な提案を求めていたコンペだし、オランダらしくクライアントとして求めていることが募集要項に明記されていた。提案の内容としても、基本的な図面(配置図、立面図、横断面程度)、簡易的な構造解析以外はほぼ自由。求められた要求に対してどう答えたのか、その考え方が問われるわけだ。細かな法規的なことや構造計算などよりも、どう考えたかを競い合う。

クライアントとしての要求は、シンプルな橋、建築的な価値を持つこと、経済性、メンテナンスの4つ。いつものようにかたちをどう導き出したかというストーリーにのせ、プレゼンを行った。かたちは力学的特性(曲げモーメント分布)から導き出されたものであると同時に、鳥が海面を羽ばたくイメージや海の波のイメージが統合されたものになっている。横断面のシークエンスを見ると鳥が羽ばたくような形状をしているのだ。立面的には、厚さ30mmの一枚のスチールシートがゆったりと波のようなカーブで連続し、海の上に浮かぶことになる。スパン割は約20mピッチで施工性、コストと同時に力学的な観点からも非常に合理的なものになっている。また、床版や桁といった区分がなくスチールの板一枚が橋脚の上にのるだけなのでメンテナンスも容易だし、施工性やコストの観点からも利点がある。すべての要素が不可分に結びついている。このことがこの事務所の提案の最大の特徴なのだ。

今年の初旬に勝ったブリュージュのコンペに続き、この橋もこれまでの作品に比べるとシンプルで控えめなかたちである。ただしただシンプルで控え目ではヨーロッパでは勝てない。たとえコンペでシンプルな提案を求めていても、どこかに独特の人を惹きつける魅力、もしくは議論できる内容を持つことが重要なのだ。

今取り組んでいるフランスのコンペも同様に自然との親和性を求めている。このところそういう内容の提案が多い。シンプルでありながら同時にという一見すると相反するような命題は、僕にとって非常に興味深い。きっとそういった中から新しいものが生まれてくる気がしている。

写真は内容とは関係ないが、ケブランリーのパトリックブランの壁面緑化。アートと建築の融合が自然体な感じがして、ジャンヌーベルの建築はやっぱりいいと思った。6月初旬の休暇中の写真をブログに載せようと思ったら、パリの建築的な写真はこれだけ。でも今回のパリは過去4回の中で一番楽しかった。