クライアントとしての要求は、シンプルな橋、建築的な価値を持つこと、経済性、メンテナンスの4つ。いつものようにかたちをどう導き出したかというストーリーにのせ、プレゼンを行った。かたちは力学的特性(曲げモーメント分布)から導き出されたものであると同時に、鳥が海面を羽ばたくイメージや海の波のイメージが統合されたものになっている。横断面のシークエンスを見ると鳥が羽ばたくような形状をしているのだ。立面的には、厚さ30mmの一枚のスチールシートがゆったりと波のようなカーブで連続し、海の上に浮かぶことになる。スパン割は約20mピッチで施工性、コストと同時に力学的な観点からも非常に合理的なものになっている。また、床版や桁といった区分がなくスチールの板一枚が橋脚の上にのるだけなのでメンテナンスも容易だし、施工性やコストの観点からも利点がある。すべての要素が不可分に結びついている。このことがこの事務所の提案の最大の特徴なのだ。
今年の初旬に勝ったブリュージュのコンペに続き、この橋もこれまでの作品に比べるとシンプルで控えめなかたちである。ただしただシンプルで控え目ではヨーロッパでは勝てない。たとえコンペでシンプルな提案を求めていても、どこかに独特の人を惹きつける魅力、もしくは議論できる内容を持つことが重要なのだ。