2010/09/05

批判と批評

過去の事例をもとに、新しいチャレンジを批判することは容易である。時間を経て価値を持ったものも、当時は新しいチャレンジであったはずし、価値は定まっていなかったはずだ。安易な批判は誰にでもできる。批判と批評は言葉は似ているが違う気がする。批判はどこかに否定を含んでいるし、先のビジョンの提示がないように思う。批評は、新しい可能性を含んだ評者の考え方の提示のように思う。

あるデザインを論じるには、リアリティある考え方の提示もしくは可能性の提示が必要だ。そうでなくては単なる否定で、そこからは何も生み出されない。

人が使うものや場所をつくる僕らの仕事は、実践を伴うこと、実践を重ねていくことで新しい地平に向かえることがある。熊本の石橋も中世のカテドラルもローマの水道橋も実践を積み重ねることで、技術は完成されていった。実践の過程で多くの経験や思考が生まれた。

僕らの仕事はごく普通の人が使う場所、ものをつくる仕事だ。だからこそリアリティが必要だ。実際に肌で体感した経験が、リアリティのある場所やもの、概念を生み出す。人を相手にする仕事である以上、たくさんのものを見たり、たくさんのことを感じたり、多くのものを生み出してきた経験がなければ、多くの人に共感してもらえるものを構想ですることはできないのではないだろうか。

僕らは現実の世界を対象にしている以上、リアリティをともなった概念や仕組みを考えなければいけないように思う。