訪れたときはちょうど小雨が降っていたが、教会に入った途端、一気に晴れ上がり、中庭を通して側廊の木製の扉から、光が差し込んできたのである。石造りの重厚な空間が一気に柔らかく感じられた。中庭の配置と光の差し込み方のバランスがこの空間を生み出している。こういう微妙な空間のニュアンスは写真では映らない。体感してみる価値がある場所だ。
建物周辺は、カンブルの森と呼ばれ、緑に包まれる庭が広がる。高低差をうまく利用して計画されていて、中心部の喧噪から一気に雰囲気が変わる。12世紀から時間を経て積み重ねられてきた建物の配置と19世紀に計画された庭との関係は、新旧時間の中でその時代ごとにそれぞれ計画していくことの意味を教えてくれる。保存ということだけでない、もう一つのベクトルも重要なのである。