9日、ローラン・ネイ講演会翌日。
ローランと2人、早朝、緑川流域石橋群を見にタクシーで。この地域の急峻な地形がすばらしい。棚田が連続する風景の中に、ひんやりと流れる河川。深い緑に包まれながら石橋はひっそりと、でも確固とした存在感を持って存在する。そこには僕がスイスの山間部で感じたものに通じるものが見え隠れするが、自然の色彩は全く違う。ここではすべてが深く力強い。2人で一つ一つ地図を見ながら見ていく。100年以上の昔のトップクラスのエンジニア、職人の建造物を、現代のトップクラスのエンジニアの視点に触れながらまわる。非常に贅沢な時間だった。
時を経ても伝わるもの。橋ひとつひとつ、石積みひとつひとつ、きっとそこには意味がありドラマがある。100年以上たって僕らはそれらの前に立っているのである。僕らの時代に数百年たった後、これらと肩を並べることができるものがあるだろうか。意志を持つこと、プライド。常日頃からローランの言葉にも混じるこの言葉。現代のエンジニア、デザイナーとして僕らができること、その責任。そういったものを考えながらの4時間。
僕はこういったことを人に伝え、人と共有していくことがデザイナーとしての役目だと思っている。ローランがもっとも重要視するのはプロセスだという、共有されるためのプロセス。毎回講演をするたびに聴講者の共感を得ることができるのは、彼がこのことを大切にしているからだと思う。プレゼンテーション、もしくは彼のプロジェクトは共有されることに主眼が置かれている。エンジニアとして、百年以上残るものに携わる人間として。
あらためて、人と何かを共有することの大切さを感じれた熊本。
僕はこの街が好きになりそうです。