構造と意匠を統合する教育や、そのためのデザインプロセスに関しては、まだ明確になっていない部分が多く感じられるものの、プレゼンテーション全体を通して、構造を評価する価値は、状況や場所に応じて多様にあるべきことを伝えようとしている。
僕の今の環境でも同じことを違った表現でプレゼンテーションしている。僕たちがとっている方法がよりデザインプロセスを透明にしていくことに主眼が置かれたプレゼンテーションなのに対して(ここには公共性ということがある)、彼のプレゼンは、より概念的に(もしくは思想的に)同じ問題を表現しようとしている。
僕は、多様性ということは、現代的な問題であると思っている。構造デザインにおいてはこれから特に考えなくてはいけないテーマだと思う。エンジニアは構造解析や技術的な問題を数学的に解くことに集中していくと、ある価値を絶対的に信じがちになる。多様性と逆行する方向なのだ。
多様性というのは、一見簡単にできそうに見えて、非常に厄介な言葉なのだ。ここでいう多様性は、かたちのバリエーションという意味ではなく、場所固有の価値を見いだすこととつながっている。
場所固有の価値(固有性)と、力学もしくは技術的な価値(普遍性)が合わさった先に、本当の意味での意匠と構造の融合がある。このことは実際のプロジェクトの中で思考し体感しないと理解できない部分でもある。
多様性、公共性。この2つは僕にとってキーワードなのである。