2010/04/13

入稿

今日もレイアウト作業。細かい部分を修正していく。本とか展覧会は見た目以上に細かい作業が多いのだ。多くの情報をわかりやすくセレクトしていくと同時に、核となる方向性をつけていかなければならないからだ。今回の展覧会は、10年以上にわたるローランネイの仕事を初めて総括するかたちなので、特に情報量が多い。複雑になりすぎず、かつある種の特徴を際だたせることは想像以上に難しい。松屋でやった「工事中景」展の時もそうだったが、最終的には欲張らずシンプルに一つの方向でまとめた方が特徴が際だつ。僕としては今回のポイントは、スケール感である。おそらく注意深く見ないと気がつかないとは思うが、先日書いたように身体スケールに合わせたグラフィックレイアウトを行っている。空間的な仕掛けではなく、模型も含めて身体スケールを意識した構成で全体が成り立っている。

もちろん内容としては、展覧会のタイトルにもあるように、力学をベースにしながら「かたち」を生み出していくという、ローランネイの思考にスポットを当てている。力の流れを意識するということは古典的ではある。だが、彼の特徴は最先端の技術も取り入れながら、力学によって生み出される「かたち」の可能性を拡張しようとしているところにある。と同時に力学をベースにするからこそ無駄のない、しかも建設可能な構造体へと到達することが出来るデザインプロセスにある。力学が基本になることで合理的な最適解に近づくため、建設行為で特に問題となるコストの問題も解消されていくのだ。意匠性と経済性もしくは安全性は相反しないのである。このことは解析を含めたデザインプロセスが事務所内で完結できることとも関係している。展覧会で紹介している「かたち」の成り立ちをじっくり見ていくことで感じてもらえるのではないかと思う。それぞれの「かたち」はデザインが先行されているかのように見えて、実はすべて合理的に説明可能なのである。感覚だけにまかせて任意に引かれた線は一本もない。どのように「かたち」が生み出されたのか、「かたち」と力の関係はどのように考えられているのかに注目してもらいたい。そして「感覚だけに」と書いたが、直感による部分と力学によって決められる部分のバランスから成り立っていることも、じっくり英語を読んでもらえれば感じてもらえるのではないかと思う。

今日はテレビの取材で僕も紹介された。オランダ語なのでどこで流れるのかよくわからないが。。。

さあ、明日朝入稿だ。